オミナエシ科(Valerianaceae)。カノコソウ(別名ハルオミナエシ)の中から良い形のものを選び、カメバキッソウと呼ばれて栽培されていたが、戦時中に栽培を休んだためにほとんどが絶え、今ではまれな種となっている。高さ0.5~1.0m の多年草で、葉は対生し、丸く亀のようであることからこの名がついた。5月頃、淡紅色で小さな散房状の花を枝の先端につける。根茎及び根を乾燥したものを吉草根(キッソウコン)、纈草根(ケッソウコン)と称し、その浸剤又は、チンキとして神経過敏症、精神不安症の鎮静薬としてヒステリー・心悸亢進に用いる。また、根に精油を含んでおり、香りがインド産の香料、甘松香に似ることから「和の甘松香」といわれる。特にカメバカノコソウは香りが強く、優良種とされる。近縁種にセイヨウカノコソウ(V. officinalis L.)があるが精油含量は3%程度。山野に自生する類似種のヤマカノコソウ(ツルカノコソウ)は薬用にはならない。
(写真、文ともに奈良県薬事指導所提供)