- ソメイヨシノ
ほぼ日本全域に植栽されており、もっともよく見られる桜。
バラ科サクラ属の落葉性高木で、高さは7mくらいになる。花は4月上旬、淡紅白色の5弁花が葉の出る前に咲いて満開となる。葉は、倒卵形~楕円形で先はとがって縁には鋸歯があり、互生してつく。果実は1cmほどの球形で熟すと黒紫色になる。
オオシマザクラとエドヒガンとの交雑種であるとされ、江戸時代末に染井村(東京都)の植木屋が桜の名所の吉野山にちなんで吉野桜と呼び広めたが、吉野山のヤマザクラと混同するとして、明治になり染井吉野と命名された。ちなみに奈良県の県花は「いにしへの奈良の都の八重桜 けふここのへに匂ひぬるかな」と詠まれた奈良八重桜である。
生薬としては、サクラ Prunus 属の樹皮をはいで周皮を除き乾燥したものを桜皮(オウヒ)という。主にヤマザクラが用いられる。オウヒは日本由来の生薬で、江戸時代の「奇方録」に“一切の食毒に、桜の甘肌を乾かし沫にして用う”とあるように、民間療法で食あたりなどに用いられた。その他、二日酔いや打撲傷、おできなどに用いた。
食用としては、八重桜の花を塩漬けにしたものは桜湯などに、オオシマザクラの葉を塩漬けにしたものは桜餅などに使われている。この葉の独特なよい香りは、塩漬けにより成分のクマリン配糖体が分解して生じたクマリンによるものである。
(奈良県薬事研究センターよりご提供)