- クズ
マメ科(Leguminosae)。全国各地の山野に自生するつる性の多年生木本。主根は太く径約20cmにもなり、地下を長く伸びる。夏から秋に紅紫色の長さ約2cmの蝶形花が総状花序になって葉腋に付く。クズの名は大和の国の「国栖」の人が葛粉を売って歩いたことから付いたものである。クズは万葉の秋の七草の一つで、古くから日本人の生活に結びついた植物である。つるは丈夫で腐りにくく、縄の代わりにした。また、このつるを水に浸して繊維を織ったのが「葛布」で衣服に利用された。クズの白い葉の裏をみせてなびく姿はわびしい風情を感じさせるが、その葉はタンパク質に富んでおり、牛馬の飼料などに用いられた。クズの周皮を除いた根を乾燥させたものを「渇根(カッコン)」と称して、漢方処方の要薬として用いられ、鎮痛、発汗、解熱の作用があるといわれる。「吉野葛」はクズの根から得られたデンプンで、和菓子の材料やクズ湯に用いられているのは有名であるが、現在、「葛粉」として安価で売られているものはジャガイモデンプン等を混ぜた贋物が多い。この葛粉をお湯で溶かして、おろし生姜・砂糖等を加えた「クズ湯」は身体を温め、体内の水分喪失を防ぎ、口渇を止め、下痢の緩和に効果があるといわれ、かぜのひき始めに有効である。また、クズの花を乾燥させたものを葛花(カッカ) と呼び、二日酔いに良いとされる(3~5グラムを300mlの水で煎じ、冷やして服用)。いずれも民間で伝承されてきたクズの利用法である。
(写真、文ともに奈良県薬事指導所提供)