キク科の一年草。高さは30~60cm、茎は直立して多数分枝し、葉は細かい羽状で互生する。花期は初夏で、黄色の筒状花とその周りに白い舌状花がつく直径2cmほどの頭花をつける。頭花は初め扁平だが、開花が進むと筒状花が盛り上がり舌状花が垂れ下がる。
薬用部分は頭花で、開花期に採取して乾燥させる。頭花はリンゴ様の香りがするが、乾燥してもかすかに残る。味はわずかに苦い。生薬名カミツレは、日本薬局方に第六改正まで収載されていたが、現在は日本薬局方外生薬規格に収載されている。発汗、鎮痛、鎮痙、健胃、抗炎症作用があり、風邪、頭痛、胃痛や胃弱、不眠などに用いられる。また、エキスは収斂、保湿成分として化粧品に配合されている。
日本には江戸時代にオランダ人によって紹介された。原産地のヨーロッパでは、古くから風邪や頭痛、下痢などに、生の花をお茶として飲む風習があり、最も一般的な薬用植物の一つである。属名のMatricariaは、ラテン語のmater(母)、matrix(子宮)に由来すると言われ、婦人病に用いられたことがうかがえる。
本種は別名ジャーマンカモミールという。類似植物のローマンカモミールは、多年草で全草にリンゴ様の香りがあり、成分は少し異なるが同様に利用されている。草丈が低く踏むと香るので芝生に利用されることもある。ちなみに花言葉は「逆境に負けない強さ」である。
(奈良県薬事研究センターよりご提供)