薬用植物紹介

ナツミカン

ナツミカン
Citrus natsudaidai Hayata

日本の暖地に栽培されるミカン科の常緑低木。別名を夏柑(なつかん)、夏橙(なつとう)、夏代々(なつだいだい)とも言う。

果実は秋から熟し始め、冬の間も黄色に実っているが、この時期は酸味が強くて食べられない。そのまま冬を越して初夏に完熟すると、酸味が減り食べることができる。

原産地は山口県で、長門市青海島に原木(天然記念物)が植えられている。現在は愛媛県、広島県、和歌山県で多く栽培されている。高さは3mほどになり、枝を広く張る。葉は互生し、葉柄に狭い翼がある。初夏には香り高い白色の花をつける。果実は、扁球形で皮は厚くいぼが多い。強い酸味は、果肉中にクエン酸や酒石酸、ビタミンCの含量が多いためである。生食用には、酸味の少ない甘夏柑(あまなつかん)の生産が増えている。

ナツミカンの未熟果実をそのまま又はそれを半分に横切し乾燥したものは生薬「枳実(きじつ)」として日本薬局方に収載されている。枳実の基原植物には他にダイダイなどがある。ダイダイの果実は、2~3年は枝についたまま落果しないので新旧代々の実がつく縁起物として、また正月頃の果皮の黄金(こがね)色にあやかり、正月飾りに用いられる。枳実は、芳香性で果皮が厚く苦味の強いもの、また陳(ふる)いものが良品とされている。神農本草経では中品に収録され、「大風が皮膚中に在って、麻豆の如く苦痒あるものを主る。寒熱、結を除き、痢を止め、肌肉を長じ、五臓を利する」と記載される。芳香性苦味健胃剤、去痰、排膿、緩下薬として、胸腹部の膨満感や炎症を目標に用いられる。漢方処方では、大柴胡湯、清上防風湯、通導散、茯苓飲、四逆散などに配合されている。

成分:
精油(d-リモネン)、フラボノイド類(ナリンギン)、シネフリン、など。
使用法:
浴用剤として、果皮を乾燥させ袋につめて浴槽に入れて用いる。湯冷めしない、血行をよくする、疲労回復などの効果がある。

(奈良県薬事研究センターよりご提供)

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