薬用植物紹介

チャ

チャ
Thea sinensis L.

ツバキ科(Theaceae)。中国原産の常緑小高木。九州で野生化し、各地に栽培される。茶園では低木状に栽植する。

日本には奈良・平安の頃製茶されたものが導入され、薬用としてわずかに用いられていた。その後、805年最澄が唐から種子を持ち帰ったとされ、更に1192年栄西が製法と共に種子を宋から持ち帰ったことによってチャの栽培が盛んになり、喫茶の風習が広まったとされる。

10~12月にかけて、葉腋に白色の5弁花を下向きに咲かせる。やくは黄色。扁円形の蒴花は翌年の秋に熟し、3つに割れて暗褐色の種子を3個出す。

葉は緑茶、烏龍茶、紅茶などに調製して広く飲料として用いられ、成分として含まれるカフェイン等による利尿、発汗、興奮、タンニンによる止瀉などの効果がある。屑葉はカフェインの製造原料に用いる。

チャより大形のトウチャ(ニガチャ)Thea sinensis L var macrophylla Sieb.は自家受精したチャから生じる3倍体で、葉は苦く、緑茶には不適である。チャにはその他多くの品種がある。

採取時期:
春から夏にかけて葉の先端に生じた若葉を摘み取る。
調製法:
製法の違いによって緑茶、烏龍茶、紅茶となる。
緑茶は若葉を短時間強く加熱し、更に揉んで乾燥したもの。
日本では蒸製で加熱し、一部釜炒りする。中国では全て釜炒り。
加熱により、葉に含まれる酵素が失活し、発酵が起こらず成分の変化がほとんどないため、ビタミンC含量が高く、ポリフェノール類も変化していない。
不発酵茶。品質により玉露、煎茶、番茶などがある。
玉露は茶摘み前20日位からよしずをかけて栽培した若葉を製茶したもので最高級品。
烏龍茶は茶葉を発酵させ、発酵半ばで加熱して酸化反応を中止し、更に揉んで乾燥したもの。
緑茶と紅茶の中間の半発酵茶。中国福建省、武夷山地方が発祥といわれる。
ここで生産される烏龍茶は武夷岩茶と呼ぶ。主産地は福建省、台湾。
紅茶は茶葉をよく揉んで1~3時間発酵させた後、過熱して酵素を失活させ、乾燥したもの。発酵茶。
紅茶原料にはポリフェノール含量が高いアッサムチャ Thea sinensis L. var.assamica Pierre などが適している。
ビタミンCは酸化により消失するが、その他の成分の化学変化により紅茶特有の色と香りが醸し出される。
性味:
性は涼、味は苦・甘
帰経:
心、肺、胃経
成分:
葉にはプリン塩基(カフェイン、テオフィリン、キサンチン)、タンニン関連ポリフェノール類(カテキン類:主成分は渋みの主体である(-)-エピガロカテキンガレート)、ステロイド、トリテルペノイド、ビタミン、アミノ酸(アルギニン、テアニン等:玉露の甘味成分)等を含む。

(写真、文ともに奈良県薬事指導所提供)

[↑]