薬用植物紹介

カメバカノコソウ

カメバカノコソウ
Valeriana fauriei Briquet

オミナエシ科(Valerianaceae)。カノコソウ(別名ハルオミナエシ)の中から良い形のものを選び、カメバキッソウと呼ばれて栽培されていたが、戦時中に栽培を休んだためにほとんどが絶え、今ではまれな種となっている。高さ0.5~1.0m の多年草で、葉は対生し、丸く亀のようであることからこの名がついた。5月頃、淡紅色で小さな散房状の花を枝の先端につける。根茎及び根を乾燥したものを吉草根(キッソウコン)、纈草根(ケッソウコン)と称し、その浸剤又は、チンキとして神経過敏症、精神不安症の鎮静薬としてヒステリー・心悸亢進に用いる。また、根に精油を含んでおり、香りがインド産の香料、甘松香に似ることから「和の甘松香」といわれる。特にカメバカノコソウは香りが強く、優良種とされる。近縁種にセイヨウカノコソウ(V. officinalis L.)があるが精油含量は3%程度。山野に自生する類似種のヤマカノコソウ(ツルカノコソウ)は薬用にはならない。

採取時期:
9月上~下旬
調製法:
秋に地上部が黄変したら掘りとり、水洗して日干しにする。
成分:
精油としてピネン、テルピネオール、ボルネオール、カフェイン、ジペンテン等のテルペノイド及びこれらの酢酸又はイソ吉草酸エステル、ケッシルアルコール等を6~8%含む。
用法・用量:
細かく刻んだものを1回量として、5g、熱湯を注ぎ、5分おいて服用する。1日3回服用。
適用:
神経過敏症、精神不安症・ヒステリー・心悸亢進に
そ の 他:
第十三改正日本薬局方第一追補において、カノコソウの基原からその他近縁植物の記載が削除され、「カノコソウ」は Valerianafauriei Briquet の根及び根茎に限定された。

(写真、文ともに奈良県薬事指導所提供)

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