薬用植物紹介

オケラ

オケラ
Atractylodes japonica Koidz, ex Kitam.

本州、四国、九州及び朝鮮半島、中国東北部に分布し、日当たりのよい山地の乾いた所に多いキク科の多年草である。根茎は長く、硬くて円柱形であり、草丈は30~60cmほどになる。花期は9月~10月で、枝の頂に白色または紅色の頭花をつける。

薬用部位は根茎で生薬名では「白朮(ビャクジュツ)」と呼ばれ、主な薬効として健胃、整腸、利尿、止汗がある。漢方では、五苓散、防風通聖散など様々な処方に配合されている。日本ではホソバオケラ(Atractylides lancea)の根茎を蒼朮(ソウジュツ)としている。白朮と蒼朮は表面の色に違いがあり、その名の通り白朮が白いのに対し、蒼朮は黒褐色である。「朮」の名称は「神農本草経」に収載され、当初は白朮と蒼朮の双方を含めたものであったが、6世紀頃には分けて扱われるようになった。成分的には白朮と蒼朮には共通するものが多く、漢方処方では共に「水毒を去り、脾胃を健やかにする」とされているが、蒼朮は発汗に作用し、白朮は止汗に作用すると「本草網目」等では区別している。

また、オケラは「屠蘇散」の原料である。数種類の薬草を組み合わせた屠蘇散を、日本酒に味醂や砂糖を加えたものに浸して作ったものを「屠蘇(とそ)」と呼び、1年間の邪気を払い長寿を願って正月に飲む薬酒である。この風習は主に関西以西の西日本に限られ、他の地方では単に日本酒のことを「御屠蘇」と呼んでいる場合が多い。

1月1日、京都八坂神社で1年の安泰を祈る神事「白朮祭」が行われる。オケラを混ぜた鉋屑に点火された火を火縄に移し、消さないように回しながら持ち帰る光景は京都の正月の風物詩である。

(奈良県薬事研究センターよりご提供)

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