薬用植物紹介

イソギク

イソギク
Chrysanthemum pacificum

関東及び東海地方、伊豆諸島の海岸に自生する多年草。種小名は太平洋の、の意味。和名は磯菊で、海岸に咲くためである。

細長い地下茎があり、株立ちになる。茎は斜上し、高さ30cm程度で、上部まで密に葉を付ける。葉は楕円形、大きく丸い鋸歯縁で、下面に銀白色の毛が密生しており、ほとんど無毛の上面から見ると、白く縁取りされているように見える。

花期は、他の菊と同様に秋。1.5cm程度の多数の頭花を散房状につける。頭花は一つの花のように見えるが、多数の小花が集まって一つの花の形を作っており、キク科の植物に見られる特徴である。ふつう、キク科の小花には二つの形がある。例えばヒマワリでは、外輪に黄色い花びらをつけた花を舌状花、内側の花びらがない花を筒状花と区別している。イソギクの頭花は筒状花だけからなり、花びらのある舌状花は無い。同様の花にアザミがある。逆に舌状花だけのものとしてはタンポポがある。

日本薬局方に、キクカ(Chrysanthemi Flos、菊花)が収載されているが、起源植物は、キク科キク(Chrysanthemum morifolium Ramatulle)またはシマカンギク(Chrysanthemum indicum Linné)の頭花とされているため、本種ではない。

キク科キクには、栽培品種が多く、頭花の変異が大きく多岐にわたる。シマカンギクの頭花は1.5~2.5cmと小さく、舌状花及び筒状花は黄色い。

キクカは10月下旬の花の満開時期に頭花を採集し、日干しする。煎じたものを解熱、消炎、鎮痛薬として感冒、発熱、頭痛などに用いる。また漢方処方の釣藤散や杞菊地黄丸にも配合される。

(奈良県薬事研究センターよりご提供)

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