薬用植物紹介

コウホネ

コウホネ
Nuphar japonicum De Candolle.

スイレン科(Nymphaeaceae)。各地の池や小川、溝などの浅いところに自生する多年草。観賞用としても栽培される。水面に出る葉は長さ20~30cm、幅7~12cmで付け根が矢じり形で厚く光沢がある。水中の葉はやや薄く、縁が波状である。4~9月頃、花茎を水上に伸ばし先端に直径4~5cmの黄色い花を咲かせる。花弁に見えるのは5枚のがく片で、後に緑色となる。花の中心には飾りボタン状の柱頭があり、種類によって模様が異なる。根茎は太く肥大して横に這い、外面が灰緑色、中が白色で多孔質である。この太くて白い根が動物の骨に見えたことから「河骨(コウホネ)」と呼ばれ、生薬では「川骨(センコツ)」と称し、利尿、浄血鎮静薬として浮腫、月経不順、血の道症、産前産後に用い、実母散等に配合される。また、発汗、健胃薬としてかぜ、胃腸疾患に用いる。民間でも婦人病に用いる他、傷、腫れ物、乳腺炎に根茎をすりおろして湿布する等、外用にも用いる。

採取時期:
10~翌年3月
調製法:
根茎を掘り取り、ひげ根を除いて約30cmの長さに切り、更に縦に二つ割にして天日乾燥する。
性味:
性は寒、味は甘
成分:
アルカロイドのヌファリジン、ヌファラミン、デオキシヌファリジン等とタンニンを含む。
漢方処方例:
治打撲一方
その他:
日本に自生するコウホネ属植物には、小型種のヒメコウホネ N.subintegerrimum Makino 、やその変種で花の色が赤変するベニコウホネ N.subintegerrimum var.rubrotinctum Makino、東北、北海道に分布するネムロコウホネ Nuphar pumilum DC.、柱頭が深紅色で尾瀬に生えるオゼコウホネNuphar pumilum DC. var.ozeense Hara 等がある。川骨の基原植物は局方において、コウホネNuphar japonicum De Candolle. に限定されており、コウホネ以外の同属植物は小型のものか、又は希少な野生植物であり、量産的に生薬の原料とされない。

(写真、文ともに奈良県薬事指導所提供)

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